宝島社文庫『廃墟の怖い話』に参加させて頂いた2作品についてのコメントです。
『「ありがとう」』
察しがつくかと思いますが、これは実体験が元になっています。
「謝らなくていいからお礼を言って」と言われた(もちろん由梨のような可愛らしいシチュエーションではない)側であり、また匡人の回想で出した「知らなくて勘違いした受け答えをしたら盛大に笑われた」のは、私が笑ってしまった側でした。
他にも色々経験したみみっちいリアル嫌な気分を、十年越しに発酵させて極端に走らせるとこうなったわけですが……昨今物騒すぎて洒落にならないのが図らずもホラーですね。
ちなみに、P38とP55で台詞が微妙に違うのはわざとです。
匡人パートでは傍点で強調してるのでお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが。
これは第三パートで匡人が由梨の言葉を捻じ曲げて「何様だよ」と言うための前振りですが、果たして実際は由梨と匡人どちらの記憶が正しいのかは読者の想像に委ねております。
由梨の記憶が正しくて、匡人の僻みが拗れに拗れてあのように歪んだ聞き取り方をしたのか。
匡人の記憶が正しくて由梨は無自覚に傲慢を発露しており、だからこそ第三パートで匡人はあのように由梨の言葉を解釈したのか。
その辺は皆様自由に解釈して頂ければと思います。
『知っている』
こちらはかなりマイルドですし、子供時代の無知と幻想がもたらす現実の結果の恐ろしさが伝わっていればいいな、というぐらいです。特に仕込みはありません。猫を黒猫にしなかったのはポーになっちゃうから敢えての白黒です。