· 

『灰と王国』書籍版について

 

●このページに記しますのは、『灰と王国』書籍版について、紙幅の都合で後書きに入れられなかった事柄、および誤字等のアナウンスです。

 

▼加筆部分について

1巻では冒頭導入部を書き直し、全体に不足がちな描写を追加しました。2巻も細かいところに修正を加えています。

3・4巻ではwebからかなり文章量を削減し、余計な枝葉を払って読みやすくしつつも内容は取りこぼしのないよう凝縮してありますので、読み比べられると印象はかなり違うだろうと思います。

3巻は特にweb版で不足していた情報や書き漏らした内容を加筆してあります。具体的には、 P22の双子の会話で2巻の内容のフォローを。またP128(3-5行)のネリスの台詞はwebにはなかったものです。 また、P52(1-5行)のフィンの考えやP315-P317の小セナトの考察で、4巻の展開への伏線を強化しました。

4巻ではそうした修正はありませんが、一点、書籍化が決まって間もない頃に「これだけは絶対に入れよう」と決めていた台詞があります。 それは、P223-224にかけての、オアンドゥスとフィンとのやりとり。

このオアンドゥスの台詞「家族ごっこをしているだけの他人か?」は、1巻の後書に書いた取材の折、団体の代表の方が別れ際に思い出したように、けれど強い口調で語られたことでした。 自分達(里親と里子含む一家)は普段はもうお互い家族だと思っている、けれどふとした折(特に第三者の観点を意識した時)にこの疑問が浮かび、その度に話し合って「家族だよね」「家族でいいんじゃない」と結論をだしてきた。きっと一生、この問いは消えないだろう、と。 “普通”の家庭に育った私の目からは羨ましいほどの“家族”であるのに、否、だからこそであるのかと、深く印象に残りました。

粉屋一家はまるで理想的な家族のように見えるけれど、それは決して稀有な“上手くいった例”ではないということ。常に問い、自覚し、働きかけ続けることで、今のこの家族になったのだ、と。それだけは、読み流されるかもしれなくても、きちんと入れておきたかったのです。

 

▼幕間および補遺の削除について

出版が決まった当初は、最後まで出せる保証がないのでweb版はそのまま残す、という約束を頂きました。 ですが無事に4巻まで刊行が決まりましたので、きっちり差別化するため、幕間と補遺だけを消すことになりました。

幕間を読まなくても大筋の把握には問題ありません。ですがweb版しかご覧になっていない場合、「あれ、こんな事どこに書いてあった?」という内容が出てきます。悪しからずご理解ご了承くださいますようお願いいたします。

 

▼福祉施設の名称について

現在の日本では、「孤児院」「孤児」という言葉にはあまり良いイメージがなく、福祉の現場では使われていないようです。乳児院や児童養護施設といった名称であり、実際にもいわゆる“孤児”は多くはないのだとか。

それを知り、『嘘つき姫と竜の騎士』では施設名を養護院に変更しました。ですが『灰と王国』については、元のまま孤児院という名称にしております。これは、時代が嘘つき姫よりも古く、社会的養護という認識がまだ出来上がっていない、また実際に舞台世界における役割が(現代でも紛争地などではそうであるように)“孤児院”であって養護院とは言い難い、そうした理由によります。

福祉関係の方にはやや抵抗がおありかもしれませんが、時代背景ゆえのこととして何卒ご理解ご寛恕のほど、お願いいたします。

 

 

以下は誤字などについてです。

細かい語句のことなど気にせずスムーズに読みたいという方は、ブラウザを閉じるか、前のページにお戻りください。

言葉につまずくことなく物語を読み進められたら、それに越した事はないと思いますので……。ご了承いただけた方のみ、画面下方へお進みください。

※分かりやすいように、ルビについては( )書きで記しております。

 

 

 

  

【1巻 北辺の闇】

 

▼単純誤字(電子書籍版ではいくつか修正されています)

・11頁10行目 取り除(よ)けた ⇒ 取り除(の)けた

・186頁15行目 戯言(ざれごと) ⇒ 戯言(たわごと)

・191頁16行目 帝位に即(そく)いた ⇒ 即(つ)いた

・326頁10行目 夕餉の炉辺(ろばた) ⇒ 炉辺(ろへん)

 

▼表記統一の誤り

作者は「呆然」と「茫然」を使い分けていたのですが、校正の段階ですべて「呆然」に統一されてしまうという事故が生じました。

辞書によっては区別されていないこともありますが、私は「呆然=驚いたり呆れたりしてポカンとする」、「茫然=衝撃あるいは物思いでぼんやりとする、放心する(茫漠の茫然)」といった使い分けをしております。

従って、以下の箇所にある「呆然」は本来「茫然」と記述されておりました。

・141頁 13行目

・183頁 8行目

・221頁 7行目

・302頁 1行目

2巻からは編集さんを通じて校正さんともしっかり打ち合わせを行い、確認を徹底いたします。

 

2014年3月末で判明している明らかな誤字は以上です。